[論文]鉄系超伝導体における異方的なVortex運動の観測
我々の鉄系超伝導体FeSe中の異方的な超伝導Vortex運動に関する研究がPhysical Review B誌に掲載されました。
第二種超伝導体に外部から磁場を印加しながら冷却して超伝導状態になる場合、いくつかの磁束はMeissner効果により遮蔽されずに量子化された磁束(Vortex)として超伝導を一部壊して捕らえられます(磁束のピン止め)。Vortexは格子欠損などに捕らえられ、高磁場下ではお互いに相互作用することで周期的な配列を組むことが知られていますが、孤立したVortexの動力学は依然未解明な部分が多く残ります。今回我々は、自作した走査型SQUID顕微鏡を使い、局所的な交流磁場を孤立したVortexに印加しその磁気的応答(交流帯磁率)を観測することで、孤立したVortexのピン止めポテンシャルの異方性の可視化に成功しました。電子ネマティック秩序に起因する双晶境界をもつFeSeでは、Vortexは双晶境界に沿って捕らえられ、これに沿った異方的なピン止めポテンシャルをもつことが我々の観測から明らかになりました。この結果は、我々の新しい手法がVortexのピン止めポテンシャルを直接的に観測する非常に有効な手段であることを示しています。
観測されたVortexが異方的に動きやすいことを示している。(a)観測されたVortex周りの交流帯磁率。(b)異方的なピン止めポテンシャルを仮定したシミュレーション。(c)観測結果とシミュレーションの差。Reprinted figure from PRB 100, 024514 (2019). Copyright 2019, by the American Physical Society.
Vortexは双晶境界に捕らえられ、それに沿って異方的な運動をする。(a)面直方向の局所磁束。(b)局所交流帯磁率。Reprinted figure from PRB 100, 024514 (2019). Copyright 2019, by the American Physical Society.