[論文]高純度UTe$_2$における超流動密度イメージング

2023年05月12日

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カイラル超伝導候補物質であるUTe$_2$の高純度結晶の局所的な超流動密度観測を行なった研究が 米国物理学会が発行する学術雑誌の速報版「Physical Review Letters誌」に2023年5月12 日付で掲載されました。

UTe$_2$は新しく発見された奇パリティ超伝導体である。一部の試料では自発的な時間反転対称性の破れや多重超伝導転移が常圧下でも観測されており、カイラル超伝導状態の発現を示唆している。ところが高品質試料作成が可能になると、比熱測定から常圧下ゼロ磁場付近での多重超伝導転移は試料の不均一性によるものであることが示唆された。このようにUTe$_2$の超伝導特性を正確に理解するためには均一な試料での測定が求められるが、これまで走査型磁気顕微鏡によるUTe$_2$の研究は報告されていなかった。

我々は、走査型SQUID顕微鏡を利用してUTe$_2$の局所的な超流動密度の観測及び超伝導渦糸の直接観測を初めて行った。実験には高品質なUTe$_2$単結晶の劈開面を使用した。局所的な帯磁率(超流動応答)を観測し試料の不均一性をミクロン単位で評価し、局所的な超伝導転移温度$T_c$を見積もった。結晶端付近で30 mKの$T_c$上昇が見られたが、端以外では均一な$T_c$を持っており、予想していた通り$T_c$付近の多重超伝導転移を示す証拠は見られなかった。この非常に均一な領域で局所的に観測した帯磁率から超流動密度の温度変化を見積もることに成功した。この超流動密度の温度変化は$b$軸上にポイントノードを持つ超伝導ギャップモデルでは説明できず、擬二次元フェルミ面において$a$軸上のわずかに開いたギャップもしくはポイントノードを持つモデルと一致している。これに加え、我々はゼロ磁場付近でもピン止めされた渦糸と反渦糸を試料中心部付近に観測した。この渦糸密度から見積もった磁場と外部磁場の関係には強磁性のような特性が見られ0.01-0.02 Gの隠れた内部磁場を示唆している。

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