[論文]超伝導体URu$_2$Si$_2$における局所超流動応答の観測

2021年06月08日

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この度、カイラルd波超伝導候補物質URu$_2$Si$_2$において走査型SQUID顕微鏡を用いた局所超流動密度応答及び自発磁化について調べた研究が米国物理学会発行の学術誌Physical Review Bの速報版であるLetter(旧Rapid Communications)のオンライン版に2021年6月8日付で公開されました。

図1(a),(b)走査型SQUID顕微鏡による局所ボルテックス磁場測定およびその動的応答と局所的なピン止めポテンシャル。(c) URu$_2$Si$_2$において得られた超流動密度の温度依存性。低温で線形に増加しており超伝導ギャップにおけるノードの存在を示唆する。Reprinted figure from PRB 103, L220503 (2021). Copyright 2021, by the American Physical Society.

 カイラル超伝導は非従来型超伝導体が自発的に時間反転対称性を破る角運動量を得る非常に興味深い量子現象である。これは非自明なトポロジカル状態であり表面もしくは欠陥付近に自発的なトポロジカルモード(例えばカイラルエッジカレントやマヨラナゼロモード)を持つと期待される。マヨラナゼロモードの観測はいくつかの超伝導体で報告されているが、カイラル超伝導については未だ決定的な証拠は報告されていない。

 重い電子系超伝導体URu$_2$Si$_2$はカイラル(超伝導ギャップにノードを持つ時間反転対称性が破れた)超伝導の候補物質であり、また超伝導相と共存する隠れた秩序相の研究が長年に渡って精力的に行われてきた。しかし、ノード構造やカイラリティについては試料の質に依存しているため、本質的な超伝導状態については不明確である。

 本研究では、URu$_2$Si$_2$における自発的な磁性、局所超流動密度及び局所ピン止めポテンシャルを観測するため、走査型SQUID顕微鏡を用いてミクロン単位でゼロ磁場下の磁束、低磁場による反磁性応答、孤立ボルテックスの動的応答を測定した。そして以下の結果を得た。

  1. 超伝導相(T$_sc$=1.5 K)と共存する強磁性ドメイン(T$_{FM}$=16.1 K)を観測。
  2. 強磁性ドメインから十分離れた超伝導相において自発的磁化は観測されなかった。
  3. ピン止めポテンシャルは局所的に2回及び4回回転対称性を持つが、その異方性は長距離秩序を持たない。
  4. 強磁性ドメインから十分離れた超伝導相において線形の温度依存性を持つ超流動密度を観測。

これらの結果は、URu$_2$Si$_2$において超伝導ギャップにおけるノード構造の存在を支持するがカイラリティは持たないか検出可能な自発磁化を導かないことを示唆している。

題名:Local observation of linear-$T$ superfluid density and anomalous vortex dynamics in URu$_2$Si$_2$
著者:Yusuke Iguchi, Irene P. Zhang, Eric D. Bauer, Filip Ronning, John R. Kirtley, and Kathryn A. Moler
雑誌:Phys. Rev. B 103, L220503 (2021). 

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