[論文]らせん磁性超伝導体RbEuFe$_4$As$_4$における磁気揺らぎによる超流動密度の局所的減少の観測
らせん磁性超伝導体RbEuFe$_4$As$_4$の局所的な磁気ドメイン形成およびMeissner応答の同時観測を行った研究が 米国化学会誌「Nano Letters」のオンライン版(ASAP)に2024年7月15 日付で先行掲載されました。
私たちの研究は、特に非従来型超伝導体における超伝導性と強磁性の興味深い共存と相互作用に動機づけられています。AndersonとSuhlによる理論的予測では、磁気秩序の波長が超伝導磁場侵入長より短ければ、不均一な磁気相が$s$波超伝導性と共存できるとされていますが、既知の材料では転移温度が低いため実験的な調査が制限されていました。鉄系超伝導体、特にEuを含む1144型超伝導体ファミリーの発見により、これらの現象を探求する新たな道が開かれました。私たちの研究は、らせん磁性超伝導体RbEuFe$_4$As$_4$における超伝導性と強磁性の興味深い共存と相互作用について調べました。
走査型SQUID顕微鏡を用いて、この物質のその場での磁束($\Phi$)及び帯磁率($\chi$)をマイクロメートルスケールの空間分解能でイメージングしました。(下の動画を参照)解析結果からこの物質の反磁性(Meissner応答)および強磁性応答についてそれぞれ異なる温度・場所で得ることができました。磁気相転移温度($T_m$)近くで超流動密度の顕著な抑制を観察し、これはEuスピンとFe 3$d$伝導電子間の磁気散乱の増強に起因すると考えられます。このことは、超伝導に対する磁気ゆらぎの強い影響を示しています。予想される理想的ならせん磁気相とは対照的に、$T_m$以下で複数の強磁性ドメインを確認し、これはEuスピンの傾斜効果による弱い$c$軸強磁性成分を示唆しています。これらのドメインの形成は、ドメインMeissnerやドメイン渦-反渦相などの超伝導駆動現象の可能性を示しています。
[1] In Situ Local Imaging of Ferromagnetism and Superconductivity in RbEuFe$_4$As$_4$
H. Man, Y. Iguchi, J.-K. Bao, D. Y. Chung, and M. G. Kanatzidis
Nano Letters, ASAP
https://doi.org/10.1021/acs.nanolett.4c02475